| 件名 : | 第382号:コーアクシャル。 |
お客様、昔は気に留めていなかったものを、いま改めて大事になさっていませんか。 わたくし近藤はまだ若輩とも言える年齢ですが、若い頃は勢いや見た目で選んでいたものも、 歳を重ねるにつれて使い心地や、長く付き合えるかどうかを考えるようになりました。 たとえばお料理などでも濃い味より、素材を感じるものを好むようになったり、 洋食より和食を選ぶ日が増えるね、という話を友人としたところです。 そうした変化の一環で、夜遅い食事を避けるようになった修理工房の近藤でございます。 お客様はいかがでしょうか。いや、深夜のラーメンも美味しいですよね。 = ■本日は、オメガのコーアクシャル脱進機(だっしんき)についてお話しをいたします。 脱進機とは、ゼンマイの力を一定のリズムに整え、秒針を刻ませるための心臓部分の部品で、 「十分に完成されている」という理由からおおよそ100年ほどは、基本構造が変わっておりませんでした。 従来の脱進機の基本的な構造には、「部品同士が擦れ合いながら動く」という弱点があり、 摩耗が生じるため、機械油が必要になり、時間の経過と共に油が劣化し、少しずつ動作に影響します。 これは「故障ではなく、機械式時計はそういうもの」と長年受け入れられてきた前提条件でもあります。 しかし、ジョージ・ダニエルズという時計師は、1970年代に「摩耗を減らすことができないか」と考え、 まったく新しい脱進機の構造を設計しました。それが、コーアクシャル脱進機でございます。 理論的には非常に優れていましたが、構造が複雑のため、当時では「量産が難しい」と言われており、 なかなか実用化が進みませんでした。 しかし、1999年にオメガが世界で初めて、コーアクシャル脱進機を搭載した時計の量産モデルを発表します。 この脱進機の特徴は、部品同士の接点を面ではなく点にして、摩擦を大幅に減らしているところにあります。 擦りながら力を伝えるのではなく、押すことで効率よく伝える構造になっております。 このようにすることで、動作の精度(正確性)が長期間安定しやすくなるほか、部品の摩耗も少なくなります。 結果として、メンテナンスの間隔が長く取れるというメリットがございました。 派手さはございませんが、長く使うほど良さを実感できるのが、コーアクシャル機構ではないかと存じます。 若い頃にはあまり意識しなかった部分でも、歳を重ねるにつれて、「ここが大事なんだな」と、 感じる部分が増えてくる気がいたします。 コーアクシャルはまさに、そうした価値観の変化に寄り添うように生まれた、機械式時計の進化と存じます。 見た目ではわかりにくい部分ではございますが、長くご愛用いただくための工夫が詰まっている。 そうした点も含めて、お時計をお選びいただけますと幸いです。 弊社ではコーアクシャル搭載モデルのオーバーホールやメンテナンスのご相談も承っております。 ご不明な点や、気になることがございましたら、お気軽にお問い合わせください。 余談ではございますが、コーアクシャル(co-axial)は少し専門的に聞こえますが、 意味はシンプルで、「同じ軸上にある」という意味を持つ言葉です。 以上でございます。 最後までご覧くださり、誠にありがとうございました。 【近藤のひとこと】 国内新品のお時計を2割引で販売する取り組みに関しては、 すでに、2名のお客様にご購入をご依頼いただきまして、現在、正規代理店より取り寄せ中でございます。 新たなお時計を弊社を通じてお迎えくださること、誠に嬉しく存じます。ありがとうございます。 もし現在、ご購入を検討なさっているお時計があれば、以下のフォームからお知らせいただけますと幸いです。 正式な型番をご存知でなくても、このブランドの、こういう色、形のもの、というご要望にも応じます。 ▼弊社の無料郵送パックの申し込みは、以下のURLより承ります。 ▼過去のメールマガジンはこちらでご覧いただけます。 先日、とある方が「歳をとると、たしかに勢いはなくなるけど、 何かと何かを結びつけて考える能力が増えるような気がする」と仰っていました。 そのとき私は、これこそが「面でなく点」の考え方ではないかと思いました。 ただ、本当に必要な点を知るためには、面で捉える必要があるかもしれません。 コーアクシャルと同じ100年くらい、かかるかもしれませんが精進いたします。 時計修理工房 近藤
