お客様のところでは、普段から良いものをお持ちになったり、お使いのことと存じますが、
最近、質感を高く感じられるものとの出会い、発見などはございませんでしたか?
ものの良し悪しだけでなく、人柄にも厚みというか、豊かさなようなものがあって、
お客様ご自身も、関わりある方々にも通じるのではないかと考えております。
先日、アマゾンで購入した和紙のA4用紙が、とても薄いのに高級感があって驚いた近藤です。
表面は滑らかですが、裏側に温かみのある和紙の質感がございました。機会あればぜひ。
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■本日は、文字盤の「厚み」についてお話をいたします。
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文字盤の厚みは、製造するメーカーのスタンスや、設計により異なります。
しかし、スイス製と国産の腕時計では、あきらかに塗装膜の厚みに違いがございます。
傾向として、スイス製の文字盤は薄く、国産メーカーの文字盤は厚いのです。
一般的には、厚い塗膜で覆いますと耐候性などが上がりますが、繊細なイメージは得にくくなり、
逆に薄く覆うと凹凸などのデザイン性は優れますが、紫外線などの影響を受けやすくなります。
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スイスと日本の腕時計の違いを象徴するのが文字盤の厚みであり、廉価、高級なモデル問わず、
これまで国産時計は、一貫して塗膜やクリア層を厚く重ねて、歴史を作られてきました。
セイコー社の最高級ラインであるグランドセイコーは、クリア層が約200ミクロンございます。
(一般的なコピー用紙が約80ミクロンとされています)
一方でスイスのメーカーは、できるだけ文字盤の塗装膜を薄く仕立てようと試みており、
例えばブライトリング社の一般的なモデルでは、クリア層は約20ミクロンとされています。
さらに高額でプレミアムなモデルは5ミクロン以下という場合もあり、どちらが良い悪いではなく、
何を重視されているかで、仕上げ方が異なるのです。
塗膜が厚い文字盤は、繊細なイメージを与えにくいのは事実で、そのためスイスの高級ブランドは、
薄くすることで、細かさや、エレガントな様相を表現なさっていると考えます。
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グランドセイコーの文字盤を製造する、プリンターのEPSONでも有名な、セイコーエプソン社は
耐候性と高級感を両立するために、さまざまな技法を取り組まれていています。
少々マニアックなお話になり申し訳ございませんが、代表的なものを1つだけご紹介いたします。
グランドセイコーのスプリングドライブと呼ぶモデルの文字盤は、真鍮製の文字盤の地板の上に、
0.3ミクロンほどの黒ニッケルメッキをかけ、さらに2ミクロン以上の黒のラッカー塗装をします。
(あらかじめニッケルメッキを載せるのは黒を強調するための技法と伺っております)
その上から200ミクロンのクリアを塗装して、一晩常温で馴染ませた後、
徐々に温度を上げることで、溶剤を抜く作業を実施します。
完全に乾燥したら表面をダイヤモンドカッターで研磨することで、全ての工程が完了となりますが、
近年ではその上にまた特殊ラッカーを極薄で吹き、質感を変化させる工程が追加されたようです。
この変化により、文字盤の表面に霧がかかったような質感となり、高級感がさらに向上しました。
もちろんスイスのメーカーもこのような繊細な表現に挑んでいますが、僅か1ミクロン以下の厚みで、
均一にラッカー塗装ができるメーカーは、世界でもセイコーエプソン社しか存在しないと言われます。
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文字盤は、紫外線の影響により色が変化したり、表面の塗膜やクリア層が劣化することにより、
剥がれたり傷がついたような見た目になることがございます。
必要に応じて交換、再塗装などをご提案することが可能でございますが、そのままになさるのも、
大切にされてきたこれまでのストーリーや、味や温かみを感じられて良いのではないかと存じます。
以上でございます。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
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【近藤の一言】
時計修理工房に寄せられたお問い合わせや、修理の履歴は、専用の管理システムで保管をしており、
お名前や電話番号はもちろん、ブランド名やシリアルナンバーで瞬時に検索することができます。
2013年3月2日に最初の1件を登録させていただいてから、本日12月6日では100,427件と、
約11年で10万を超えるご相談や修理をお任せいただきました。誠にありがとうございます。
このデータベースの「厚み」により、新たなお客様にご案内する精度を上げているほか、
過去にご依頼いただいたお客様のお時計の修理、メンテナンスの履歴も残しております。
私たちにとっても、お客様とっても、貴重な価値があると考えております。
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歳を重ねるごとに、見た目以上の「厚み」を持たれることと存じますが、
心をすり減らし、お疲れになってしまったときは、お気持ちのリペアをいたしましょう。
うすく塗り重ねるように、小さな幸せを重ねていかれることを心から願っております。
時計修理工房 近藤