お客様、ふだんお部屋は、何度くらいに保っていらっしゃいますか?
季節はちょうど夏から秋への移り変わり、お部屋やお車の温度調整をなさる機会もあろうかと存じます。
私たちの身体は温度にとても敏感で、少しの違いでも快適さが大きく変わるかと存じます。
ひとの身体は、温度が高いと倦怠感などが現れやすく、動きが鈍くなり、
低すぎても、かじかんでスムーズさを失います。
普段は意識することが少ないかもしれませんが、その環境によって本来の力が大きく変わるのです。
冬季には車のミッションオイルが硬くなり、入りが悪いので粘度を調整している、修理工房の近藤です。
いつもメールマガジンをお受け取りくださり、誠にありがとうございます。
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■本日は、精度に影響する温度についてお話しをいたします。
腕時計の世界は奥が深く、機械式かクォーツか、ブランドやデザインなど、多くの楽しみ方があります。
そのなかでも、精度は時計の本質的な価値を左右する重要な要素です。
普段は気にすることがすくないかもしれませんが、実は温度が精度に大きく影響することがございます。
▼機械式時計と温度
まず機械式時計の場合、精度に大きく関わるのは「テンプ」と「ヒゲゼンマイ」と呼ばれる部品です。
温度が上がると金属が膨張し、ゼンマイの弾性が弱まって振動が遅くなり、精度は「遅れ」方向にズレ、
逆に温度が下がると金属が縮み、弾性が強まり、精度には「進み」方向の誤差が発生します。
この影響を数値で見ると、現代のクロノメーター級(COSC規格)の腕時計では、
「1度の変化で日差±0.6秒」程度の誤差が許容範囲とされています。
つまり、20度の部屋から30度の環境に移動すると、日差±6秒ほどズレる可能性があるということです。
また、アンティークの懐中時計では「1度で日差±10秒前後」の誤差が発生することもあるようです。
現代でよく使用されている合金のヒゲゼンマイや、シリコン製のヒゲゼンマイは、
この温度の影響を大幅に抑え込んでおり、実用上は大きな心配なほどに改善されています。
※ただし、油の状態も重要で、温度が高いと潤滑油が柔らかくなって流動しやすくなり、
逆に低温では硬化して動きが渋くなり、これも精度低下の一因となる場合があるため、注意が必要です。
つきましては、機械式時計はおおむね「20度前後」で使うのがもっとも安定しており、
メーカーもこの範囲での精度を想定して調整を行っています。
▼クォーツ時計と温度
クォーツの場合は、水晶振動子(電圧をかけると振動する部品)の特性が大きく関わります。
水晶は25度付近で最も安定した振動数を刻むように設計されていることがほとんどでございます。
そのため温度が変化すると、その振動数は二次曲線的にズレが発生いたします。
(真ん中が一番正確で、寒暖の両端に行くほど誤差が出るという意味合いです。)
具体的には、±1度の変化でおよそ0.003秒、±5度で約0.08秒、±10度で約0.3秒程度の、
日差が発生すると言われています。(日差:24時間で発生する誤差。)
年単位に換算すると、±10度の環境では年間110秒近い誤差が発生する計算となりますが、
これでも機械式に比べれば圧倒的に正確ですが、温度による影響は無視できません。
そこで登場するのが、温度補償型クォーツ(TCまたはHAQ=High Accuracy Quartz)です。
内部に温度センサーを備え、リアルタイムで水晶振動子のズレを補正します。
これにより、年差数秒という驚異的な精度を実現しており、シチズンのCal.0100は年差±1秒という、
世界最高レベルの性能を誇ります。
通常の生活環境では温度変化があっても、ほぼ狂いを感じないレベルに精度を高められています。
▼私たちは日常生活でどのような点に気をつければよいのでしょうか。
まず避けたいのは、急激な温度変化で、真夏の車内に置きっぱなしにすると60度を超えることもあり、
真冬の屋外では氷点下になることもあります。
サウナやスキー場など、短時間で大きく温度が変わる環境は時計にとって大きな負担となります。
また、精度への影響だけでなく、パッキンや潤滑油、ガラスの接着材などにもダメージを与えかねません。
保管する際は直射日光を避け、できるだけ「20度から、25度程度の安定した環境」が理想的です。
特に機械式時計を長期保管する場合は、油の状態を守る意味でも温度管理が大切になります。
以上でございます。
最後までご覧くださり、誠にありがとうございました。
【近藤からのお知らせ】
クォーツ時計の心臓部「水晶振動子」は、1秒間に32,768回震えるように作られています。
実はこの回数、偶然ではなく意図的に作り出されている振動数なのです。
電子回路は「2で割る」のが得意で、水晶の速いリズムを2で割る操作を繰り返していくと、
リズムをどんどん遅くすることができます。
32,768(=2の15乗)という数を選んでおけば、正確な1秒のリズムが作れるという仕組みです。
10回割るだけではまだ速すぎるし、20回割るには振動数が大きくなりすぎて電池の持ちが悪くなる。
そこで小型・省エネ・精度のバランスが最適な「32,768Hz」が世界標準になりました。
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なんとなく、お客様もお気付きかと思いますが、「温度と感情」にも相関があるそうです。
暑いときは集中力が乏しく、寒い時は内向きになる。このバランスが良いところを
研究なさった学者さんがいて、それが「25度前後」だそうです。
お気持ちが乱れやすい時、ご自身の心を見つめると同時に、
温度計をお確かめになるのも、よろしいかと思います。
私たちは同じ温度で、同じ精度を保てますよう、引き続きお時計のお手入れに励みます。
時計修理工房 近藤