| 件名 : | 第392号:ゆっくり解ける。 |
お客様、新しい年度は、落ち着いてお過ごしでしょうか? 春先は、新しい環境や目標もあって、気持ちが高まるほか、 無意識のうちに肩に力が入りやすい時期でもございます。 ひとの持つエネルギーには限りがあり「一気に力を出す」ことはできても、 長期間、同じ強さで保ち続けるのは難しいものだと教わったことがあります。 ここ数年ほど、何事にも「均等にすること」を念頭に置いている、 修理工房の近藤より、今夜のお便りを差し上げます。 = ■本日は、お時計の原動力である「ゼンマイ」の役割について、お話しをいたします。 機械式のお時計には電池ではなく、代わりに「ゼンマイ」と呼ばれる、 細長い金属製の板が、香箱(こうばこ)という歯車に収められています。 ゼンマイは、リューズの操作や、腕を振る動作などで巻き上げられ、 元に戻ろうとする力が、お時計の針を動かすエネルギーとなります。 このとき重要なのが、蓄えた力を「いかにコントロールするか」というところです。 巻き上げたゼンマイが一気に解けてしまえば、お時計の針は猛スピードで回転し、数秒で停止します。 しかし実際のお時計は、数十時間もの間、ゆっくりと正確に動き続けます。 これは、内部の複数の歯車や、「脱進機」と呼ばれるお時計の心臓部が、 ゼンマイの力を受け止め、少しずつ一定のペースで原動力を消費しているからでございます。 しかし、長年ご愛用いただく中で、機械油が変質したり、乾くことで動作に負荷がかかりますと、 ゼンマイはその抵抗を押し切ろうとして、無理な力を出し続けることになります。 そしてある日、金属疲労が溜まり、切れることで、動作停止や作動時間の低下の症状が現れます。 ゼンマイは消耗部品であり、モデルにもより異なりますが、おおよそ10年で交換時期を迎えます。 そのため、長くご使用いただきますと、一度は取り替えをご経験なさると存じます。 もしも、ゼンマイが切れてしまったとしても、ご使用方法による破損は考えにくいため、 ご自身を責めることのないように、お願いいたします。 お時計が普段通りではないと感じられた際には、お気軽にお問い合わせください。 以上でございます。 最後までご覧くださり、誠にありがとうございました。 【近藤のひとこと】 昔、日本人が西洋から伝わった時計の内部にある、渦巻き状の金属の板を見た際に、 春先に芽吹く山菜の「ぜんまい」のクルクルと丸まった新芽の形にそっくりだったことから、 そのまま名前として定着したと言われています。 山菜のぜんまいを見るたびに、ムーブメント(機械)を思い浮かべてしまうのは、 時計修理に携わるものの職業病かもしれません。 ▼国内新品のお時計を2割引で販売する取り組み。 ※この試みは、いったん4月中に区切りまして、今後は「修理のご相談、ご依頼時」などに 機会をいただきたいと存じます。近日中に、改めてご報告させていただきます。 これまでお納めさせていただいたお時計は以下の通りでございます。 ・IWC [ IWC358312 ] http://bit.ly/4apw6Qp( Google 検索 ) ・パネライ [ PAM01087 ] https://bit.ly/4rhphGw( Google 検索 ) ・SEIKO [ SDKV007 ] https://bit.ly/4kxm3fv ( Google 検索 ) ▼弊社の無料郵送パックの申し込みは、以下のURLより承ります。 ▼過去のメールマガジンはこちらでご覧いただけます。 暖かくなり、何か始めようとしたら勢いづいたご経験がおありかと思います。 ただ文中でも述べましたように、最初から全力で走ると息切れいたします。 たくさんすること、しなければいけないことがあった時は、あえて立ち止まる時間を設けて、 お気持ちのゼンマイを巻いてから、動かれるとよろしいかと存じます。 全てを出し尽くすことはなく、心の「脱進機」で均等にしてまいりましょう。 お客様の春が、穏やかに流れますようにお祈りしております。 時計修理工房 近藤
