| 件名 : | 第347号:闇の中、しずかに時を告げるもの。 |
お客様、「光るもの」といえば、なにを想像なさいますでしょうか?
例えばイルミネーションや、照明などのライティング、自然界では蛍(ホタル)などが挙げられます。
また、広く使われるLEDライトや、宝石などの輝きも素敵ですね。
人間の視覚は進化の過程で、光の変化やきらめきなどを、素早く認識できるようになったと言われており、
特に美しく輝くものは、脳の「報酬系」の神経を刺激し、喜びを生み出すようです。
朝日の光や、夜空の輝き、花火の灯りなどは、一瞬しか見られない「儚さ」を含んでいることで、
特に感動につながることがあるという記事を目にして、納得したことがございます。
また、金や銀、宝石のように輝くものは「価値」や「成功」を象徴するものとされており、
お時計に関してもそのひとつであると存じます。
幼い頃は、強く光るLEDが大好きで、明るいペンライトを工作していた、修理工房の近藤です。
いつもメールマガジンをお受け取りくださり、誠にありがとうございます。
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■本日は、お時計の文字盤で輝く夜光塗料についてお話しをいたします。
暗闇の中でふと目を向けると、ぼんやりと浮かび上がる、文字盤に取り付けられたインデックスと針、
その光は微かで、どこか幻想的でございますが、確かな存在を持って時間を示してくれています。
この神秘的な輝きを生み出しているのが、「夜光塗料」でございます。
時計の世界における夜光塗料は、単なる視認性の確保にとどまらず、
腕時計という道具の進化がいかに人々の暮らしや価値観を変化させてきたか見えてまいります。
かつて夜光塗料には、放射性物質である「ラジウム」が使用されていました。
当時の時計工場では多くの作業員の方が、このラジウムの危険性を知らぬままこの塗料を取り扱い、
健康被害に苦しんだ、という悲しい歴史がございます。
そこから技術は進み、「トリチウム」そして現在では「ストロンチウムアルミネート」などの、
非放射性材料が主流となりました。
現代の夜光塗料は、安全性を確保しつつ蓄光性能を高めており、
わずかな光を吸収して暗所で数時間に渡り、輝きを保ちます。
中でも有名なのがスイスの「スーパールミノバ」、日本の「ルミブライト」、これらの名称は時計好きにとって、
ひとつの信頼の証であり、文字盤の美しさを左右する要素でもあると存じます。
夜光塗料は昼間には見えませんが、夜になるとその存在を主張し、わずかながらも物質的なぬくもりがあり、
腕時計というもの以上の思い入れを与えてくれます。
スマートフォンで正確な時間を確認できる現代においても、あえて腕時計を手にする理由は、
こうした細部の美意識に惹かれるからではないかと考えます。
夜光塗料につきましては、経年的な劣化により光の吸収が衰え、場合によりましては途絶えてしまいます。
文字盤やインデックスに関しては再塗装が困難でございますので、基本的には部品交換が必要です。
針に関しては塗り直しが可能でございますので、弊社ではご希望の方には別途ご提案をさせていただきます。
※構造上の理由により、再塗装ができない場合もございますので、詳しくはお問い合わせください。
夜光塗料の塗り直し料金は、おおよそ8,000円前後で、納期に関しては2週間前後いただいております。
以上でございます。
最後までご覧くださり、誠にありがとうございました。
【近藤のひとこと】
日本の企業が開発、製造している夜光塗料はいくつかございますが、その中でも有名なのが、
セイコーインスツルによって開発された「ルミブライト」でございます。
完全に非放射性材料で、高輝度、長残光、また劣化しにくく、人体や環境への安全性が高いことが特徴で、
世界的に注目されている夜光塗料です。
セイコーのダイバーズウォッチや、プロスペックスシリーズ、グランドセイコーなどの高級ラインを中心に、
使用されています。
また、国内外問わず様々なメーカーへ原料提供を行われているようで、良く耳にするブランドも、
もしかしますとルミブライトが使用されているかもしれません。
その他には、根本特殊科学株式会社の「ルミノーバ」がございます。
こちらは、スイスのRCTRITEC社と提携し、海外では「スーパールミノバ」の名前で広く知られています。
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お客様、夜光塗料の衰えは交換によって取り戻せますが、ご自身の輝きだけは代えが効きませんので、
お身体もお気持ちも大切にして、できるだけ長く光り続けていただきたく存じます。
梅雨の始まり、晴れやかに過ごされますよう願っております。
時計修理工房 近藤